風花のように舞い続ける綿毛が、心の中にいくつも空いた穴を埋めてくれるかのように、
車の窓から入りこんで来た。
2つの街の紀行をドラマ仕立てに綴った2つの短編。

The Town filled with fluff by Masayuki Amano
Smashwords Edition
Copyright © 2010 by Masayuki Amano, A.I.M. Corporation Limited
Smashwords Edition, License Notes
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Two short stories that spell account of a trip of New Orleans in 2000 and Minneapolis in 2003 in drama style.
The inserted photograph backs up two stories.
- 朝日のあたる街 -

★ 2000年夏ルイ・アームストロング・ニューオーリンズ国際空港
シカゴから3時間ほどのドメスティック・フライトで、狭い座席に閉じ込められてそろそろ辛くなった頃、到着のアナウンスがあった。さすが音楽の街として知られているニューオーリンズだ、空港の名前が名ジャズプレイヤー、サッチモの名前なんだから。。。
通路の両脇に3座席を配する狭い機内から脱出するには、前の客が出て行くのを順番に待つしか術は無い。目じりに深い皺を刻んだ早口のスチュワーデスが、満面の笑みを浮かべて"Thank You, Have a nice trip"と送り出してくれる。日本の航空会社では比較的若い女性が勤務する様だが、United Airlineではこちらがお世話をしたくなるような、キャリアたっぷりのお歳の方が多く乗務している。
やっと地上の確かさを足に感じた、と同時に全身を包み込む湿度を含んだ熱気が、ニューヨークと違いここは南部なんだ・・・という実感を押し付けてくる。それでも狭い通路から空港ビルに入ったら、エアーコンディションが利いた乾た空気が心地よさを取り戻してくれる。
回転台から荷物をとりだし、ガラガラと耳障りな音をたててキャリーバッグを引きずって外に出て、レンタカーのバス乗り場まで出ると、
「たった今まで忘れていただろう、ここは南部だぜ」
と再び、いや今まで以上に熱波が襲い掛かってくる。
レンタカーのシャトル・バスを降りて予約していた車の前まで来ると、白銀のごとく磨き上げられたボディが頭上の太陽とタッグを組んで更に攻めてくる。その強い陽射しに思わず眩暈のような浮遊感を覚えてしまうのだった。濃い目のサングラスをかけていても、役に立っている気がしない。

車は最新のフォード、大衆車だが足回りはなかなかいい味付けをしている。もしアメ車特有の浮遊感が有ったなら、陽射しが作り出すもうひとつの浮遊感と絡まりあって、きっと貧血でも起こしたかも知れない。しかし固めの足回りと堅実なハンドル感は、数日間運転していなかった操縦感覚を思い出させ、運転の楽しさを満足させてくれる。
サービスで装着されているカーナビは日本語も話してくれるので、馴れない街に向かうにも、不安感は一切無い。Hertzのゴールド会員に特典としての無料サービスだそうだ。長年のユーザーであることはこんな時にも、プラスになる。少しにんまりしてしまうのだった。
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★ ダウンタウンへ

海のそばのビジネス街に隣接して建ち並ぶホテル群は、使いまわされた表現を借りるなら「新しさと古さを共存させている」とでもいうのだろうか。でもそれは無理やりに、古い南部の建物のデザインだけを残し雰囲気をそう演出しているにすぎない。みやげ物屋はどの街も、国も同じ顔をしている。ホテルにチェックインする前に、ミシシッピー河のほとりに位置するErnest Morial Convention Centerにて”SIGGAPH 2000”のRegistrationを済ませる。コンピューター・グラフィックスの展示会と学会としては世界最強のものであり、20世紀最後の開催となる。
一通り事務手続きを終えて、ホテルに向かう。初めての街を最初に走る不安感はまるで感じなくなっている。ナビの存在も有難いが、標識が英語表記であることも、原因のひとつだろう。以前ヨーロッパを車で一回りしたときは、道路標識の地名が素直に頭に入ってこなくて、何度も見直したものであった。自分を含め多くの日本人は英語に堪能では無いと思うが、それでも中学から学んでいる英語は日本人には身近なのだ。
ちょっと古めのインテリアのホテル・シェラトンに到着し、チェックインをする。ふくよかな黒人のレディーがにこやかに対応してくれるが、最初から最後まで歌いっぱなし!ゲストとの会話にまでメロディーがついている。。。アメリカだなぁ!それから忘れてはいけない!お決まりで社長の必需品、「和食レストラン」の場所を確認する。わが社の社長は世界中何処へ旅しても和食を所望する。
「乾き物にコレステロールを塗りたくった食い物なんかトンデモナイ!」